勾配天井という言葉をご存知でしょうか。家を建てようと考えている方には是非知っておいてほしい用語の1つであります。というのも、それによって室内空間というのは様々な点で豊かになっていくことから、家づくりの際には必ず検討してみる価値があると言えると思います。そこで今回は、稲山貴則 建築設計事務所が手がけた建物を通じて、勾配天井の特徴や魅力について紹介していきたいと思います。住まいの天井について考える機会はほとんどないと思いますので、この機会にその重要性やデザインについて検討してみて下さい。
勾配天井とはどのようなものかについてまず見ておきましょう。通常、天井は床面と平行の水平な面となりますが、勾配天井ではその天井面に傾斜がつくことになります。前者の場合、屋根と天井の間にいわゆる「屋根裏」が生まれますが、後者の場合、傾斜する屋根の内側がそのまま室内の天井となることから、ここでは屋根裏空間がないことになります。屋根がそのまま天井として活かされるので、小屋組みを室内に現すことも可能となります。
写真:鳥村鋼一
それでは、ここからは勾配天井の魅力について見ていきましょう。その魅力としてまず挙げられるのが、室内が明るく開放的な空間となることでしょう。天井面が屋根面となることから、自然と天井高も高くなり、それによって開口をより大きく開けることができますし、視線もより抜けやすくなってきます。こちらの住まいでは、勾配天井を取り入れながら中庭を設けることで、庭側の面にプライバシーを気にすることなく大開口が開けられるようにし、家族の集まるLDKがこれ以上ない明るく開放的な空間に仕上げられています。
写真:砺波周平
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天窓を設置しやすくなることも魅力の1つとなるでしょう。屋根と天井が一体のようになっていることから、屋根に天窓を設けたい時にスムーズに考えていくことができます。天窓を取り入れれば、上からも光を室内に入れることができるだけでなく、開け閉めできるタイプのトップライトとすることで、重力換気を利用して家全体に風が通り抜けていくような通気性の良い住まいにしていくこともできます。
写真:鳥村鋼一
【天窓については、こちらの記事でも紹介しています】
一般的な天井とは異なり、勾配天井では屋根の構造を隠すのではなく、敢えて見せることで室内空間にリズム感や木材の温かみなどを与えることができます。こうした屋根の構造が現れるデザインも勾配天井の魅力の1つとなると思います。こちらの住まいでは、リズムよく並んでいる屋根の垂木に合わせて、それと同様のかたちで壁面に収納棚が設けられています。このように、勾配天井によって見えてくる屋根の構造も積極的に活かしてみてはいかがでしょうか。
写真:鳥村鋼一
勾配天井は屋根の傾斜を利用することから、マンションなど天井面が水平の住まいには取り入れることができないと思われるかもしれません。しかし、マンションでも敢えて勾配の付いた天井を室内に取り入れることで、一戸建てのような雰囲気をつくっている住まいが実際にありますし、少し発展して、こちらのように線材を異なる傾斜で連続的に配置することで、表現豊かな天井デザインにしていくこともできます。
稲山貴則 建築設計事務所が手がけた建物はこちらでも紹介しています