建物密集地域に家を建てる際にまず気になるのがプライバシー確保の問題。ただ外部に対して閉じるだけの住宅では周囲環境との関係が希薄になり、閉鎖的で孤立した印象になってしまいますよね。今回ご紹介する半谷彰英建築設計事務所/AKIHIDE HANYA ARCHITECT & ASSOCIATESによるこちらの住まいも密集地域に位置します。建築家は、中庭を囲む大きなボリュームとルーフバルコニーを囲む4つの小さなボリュームを組み合わせることで、プライバシーを確保しつつ周囲環境とのつながりを感じられる住まいを実現しました。では早速見て行くことにしましょう。
敷地は住宅や事務所等が混在する密集地にあり、プライバシーを保つこと、そして周囲環境との関わり合いをどうとっていくかが問われました。そこで建築家は大きなボリュームの上に周囲のスケールに合わせた個々のボリュームを点在させ、それぞれの場所で様々なスケール感が存在する住まいを計画しました。こちらの画像は大きなボリュームのファサード。開口を設けず、外部に対して閉じることで視線遮り、プライバシーを確保しています。外壁のメタリックな素材感がモダンな印象の佇まいです。
中庭に面して配された階段は、スケルトンタイプの軽快なデザインのもの。宙に浮いているかのような外観で、光や視線を通し、空間に圧迫感を与えません。
2階は中庭を囲んだ4隅に個室が設けられ、その間にルーフバルコニーとなるデッキが十字に挿入されています。まるで個々の部屋が小さな家のように並び、周囲の街並みに連続します。テラスには家庭菜園が施されるなど、そこが2階であることを忘れてしまうような風景が広がっています。
こちらは個室群のひとつである書斎スペース。それぞれの個室にはテラスに向かって大きな開口が設けられ、採光、通風確保と同時に、個室間の気配も伝えます。植栽や菜園など、窓から眺める景色も楽しいですね。
中庭から階段方向を望んだ様子です。大きな窓が室内にたっぷりと陽光を取り込みます。また室内外での視線と気配が交差し、空間に広がりとつながりをもたらしています。