間取りによって、住まいの快適性や利便性というものは大きく変わってくるため、それは家づくりの中でも最も重要と言っていい1つの工程です。もちろん、どのようなプランが一番良いかというのは、それぞれの家族の構成やライフスタイルなどによって様々ですが、それについて是非考えておきたいことや、押さえておきたいポイントは同様に語っていくことができると思います。そこで今回は、間取りを決める際に欠かせない基礎知識を紹介していきたいと思います。
間取りを決めていく際にまず考えておきたいことが、周囲の環境をそこに反映させることです。家づくりをしていくと、家の中だけで完結し、周辺環境にあまり注目しにくくなりがちです。しかし、もし周囲に緑や美しい風景などがあれば、積極的にそうしたものを住まいに取り入れるような間取りを考えてみるといいでしょう。反対に、隣家や道路からの視線、ゴミ捨て場などあまり住まいに取り込みたくないものはきちんと防ぐ家づくりも同時に考えていきましょう。
写真:新澤一平
外からの光が燦燦と室内に差し込んでくるような明るい住まいにしたいという方も多いと思います。しかし、家のすべての空間において十分な光を取り入れることはなかなか難しいので、間取りを決めていく際は、どの部屋に光を最も取り入れたいか、またどの部屋は光を取り込む必要がないかという判断をしていくことになるでしょう。そして、周辺の状況によって敷地のどの部分が最も採光性がいいかは異なりますので、敷地をしっかりと見ながら、明るくしたい部屋の配置を決めていくといいでしょう。
窓を開けると風が家全体を通り抜けていくような風通しの良い住まいにしたい方も多いでしょう。そこで基本となるのが、1つの部屋に2つの窓を開けることです。可能であれば、その2つを向かい合うように配置するとより風通しが良くなります。また、窓の高さに違いをつけることでも風通しは良くなります。地域によっても風の吹き方は異なりますので、気候風土をよく理解しながら、窓の配置や間取りを考えていくことも大切になるでしょう。
家の中でもキッチンや洗面所、お風呂やトイレといった水回りの間取りは、住まいの利便性に大きく関わります。基本的には、家事がしやすいように、それらの機能は1箇所にまとめることが一般的になります。また、それは配管設備の費用やメンテナンスのしやすいさでも利点があります。間取りを決めていく際には、こうした水回りにおける排水音などの水の音が寝室に響いてこないように、水回りと寝室が壁1枚だけで隔てた住まいにならないようにしていくことも大切になるでしょう。
家での暮らしを快適にしていくには、収納スペースが十分に確保されていることも大切になります。それぞれの家庭によって、必要となる収納の大きさは異なりますので、現在の住まいの収納スペースの広さを元にしながら、将来的に物が増えることも想定して、余裕のある収納スペースを間取りに加えていくといいでしょう。しかし、あまり収納スペースを大きくしては、逆に住空間が狭くなりますので、適切な収納スペースの広さを見つけてみて下さい。
動線計画も間取りを決めていく上で欠かせないものの1つです。その際には、家事動線、衛生動線、通勤動線、来客動線といった暮らしていく上での場面に分けて動線を考えていくことで、間取りを決めやすくなり、より家の利便性や快適性を向上させやすくなります。基本的には、こうした動線の長さを短くしていくこと、また動線同士が重なったり、交差しないような間取りにしていくことがポイントです。
【動線については、こちらの記事でも紹介しています】
間取りを決めていく際には、リビングやキッチンといった部分を最初に家の中に配置していき、階段は後回しにする方も多いと思いますが、意外に重要となるのがその階段は位置でもあります。というのも、階段の位置によって、2階あるいは3階といった階の利便性が大きく変わってくるからです。上の階の言わば入口というのは階段となるため、その位置は上の階の各部屋への移動距離に大きく影響します。階段が家の中に出てくる住まいは、階段の配置を優先的に決めていくことも考えてみて下さい。
▶「住まいの写真」ページでは様々な種類の階段を紹介しています。◀
※ 階段の写真ページ
間取りを上手に決めていくためには、家具や家電の配置もしていきながら進めていくことが大切になります。新しい住まいに配置する家具や家電がすでに決まっているという方は、それらの寸法を測って、検討中の間取りに反映していきましょう。それによって、部屋の大きさもより正確に検討していけますし、家具を置いてもデッドスペースが生まれないような間取りにしていくことができます。
写真:スタイル工房_stylekoubou
外構計画も住まいの快適性や利便性に影響する大事な部分です。庭やアプローチ、駐車スペースなどの計画に加えて、屋外の過ごし方に合わせて、水栓やコンセントの設置も検討しておくといいでしょう。また、車を現在持っていない方でも、将来的に所有する予定があれば、駐車スペースを設けることも考慮してみて下さい。
屋外、そして室内の間取りを計画していく際には、それぞれを単独で考えるのではなく、2つのつながりを生み出すように一緒に考えていきましょう。アプローチや駐車スペースと玄関との位置関係や、リビングと庭の行き来のしやすさなど、それぞれの暮らしに合った2つの空間の在り方を見つけてみて下さい。
快適に暮らしていくには、適切なコンセント配置も欠かせないポイントになります。間取りに家具を配置した上で、常に使用する家電はもちろん、扇風機や加湿器などの季節家電も考慮しながらコンセント配置、さらには口数も検討していきましょう。その際には、掃除機を使うことをイメージして、コンセントの場所を確認していくと、家の中にコンセントが偏ることなく、延長コードが必要になりにくい使いやすいコンセント配置をしていくことが確かめられます。
間取りの中でも多くの方が迷うことになるのが、各部屋の広さではないでしょうか。広々とした開放的な住まいにしたいと思われるかもしれませんが、家の床面積には限りがありますので、ある部屋が大きくしすぎると、他の部屋が圧迫感のある狭い空間となってしまいます。先程の収納スペースも含めて、何をどの部屋を優先するかを判断しながら決めていきましょう。
写真:meier architekten
快適な暮らしをしていく上で、静かな環境が重要という方も多いと思います。先程の水回りにおける水音はもちろんのこと、足音や洗濯機の音など、生活音が騒音にならないような間取りを考えていきましょう。また、家の中だけでなく、隣家や前面道路の音が快適な暮らしを妨げないような家づくりも行っていきましょう。
写真:Takumi Ota
隣家や前面道路からの視線が家の中に入ってこないような間取りにもしていき、家の中のプライバシーがきちんと保たれる家づくりもしていきましょう。また、外からの視線だけでなく、室内においてプライベートな空間が欲しいという家庭は、そうした部屋もきちんと家の中に設けてあげましょう。